序章教室の片隅、独りパソコンに立ち向かう男がいた。彼の名は浅野龍一(仮名)。 経理事務系の専門学校に通うややたくましい体格の25歳である。 この学校に通って3年。 体調を崩し苦しい時期もあったが、この春晴れて卒業の予定で就職活動も結果待ちの状態となった。 卒業を前にしたこの時期。多くの生徒は就職先へアルバイトをしに行ったり、あるいは学校を休んで悠々自適な生活を送っている。 しかし、浅野は体調を崩していたこともあり出席日数を稼ぐ必要があった。 当然、この時期から新たに学習できる科目もなく、登校して何をするのかが大きな問題となった。 そんな浅野にたいして担任は、就職対策としてパソコンをするのはどうか?という案を出した。友人がノートパソコンとエクセルの本を持ってきてくれるという。 他にすることもない。浅野はこの案にのることにした。 日商簿記1級の対策をする教室の片隅。一人パソコンに向かう浅野。 一週間が過ぎ、彼はエクセルの本をやりきった。 ささやかな達成感・することがなくなった虚無感。 さまざまな感情が浅野の心を包んだ。 しかし、これが本当のスタートであることを誰も知る由がなかった・・・ |